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人を喰う巨人はこいつが元祖。
Posted on 2016.12.12(Category:奥田大器は語りたい)
最近陶器ばっかりだったんで
久々に行きますよ。
純朴進撃の陶芸家の奥田大器です。
8/17以来の特撮ネタです。
‟至高"の怪獣映画を紹介します。
『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』
この怪獣、ガイラの方ですが人喰います。
それも若い女を喰います。
しかも喰った後衣服をペッと吐き出します。
海外版はそのボロボロの衣服のアップあります。
その女の人何も悪いことしてません。
偶然そこにいたから喰われます。
結構ショッキングなシーンです。
多分ですが日本で初めて
人を喰う怪物をビジュアル化した作品だと思います。
もうお解りですね。
『進撃の巨人』の完全な元ネタです。
『進撃の巨人』は平成の『サンダ対ガイラ』です。
これだけ言っちゃうとまるで悪趣味映画みたいですが
内容はま~~~たく違います。
テーマは超最先端です。
むしろ2016年の現在でも充分問題となるテーマです。
生命倫理、
人間が生命を作る事に対する問題提起です。
人間は神になっていいのかという事を描いています。
フランケンシュタインの細胞から人格を持った
‟怪物"を人間が作ります。
当然そのサンダとガイラには人格がある訳です。
人間は自分で作った命を害があるからと攻撃します。
このテーマを1966年(昭和41年)、
50年前に映画化しちゃってます。
当時の東宝特撮陣の脂ののりかたが解ります。
この年には『ウルトラマン』もTV放映が始まります。
ゴジラシリーズも製作しています。
円谷英二大先生の絶頂期です。
この4年後に亡くなられるのが信じられない。
また監督の本多猪四郎先生の
科学的考察が‟物凄く"最先端を行っていた事が解ります。
この事は「本多猪四郎 無冠の巨匠」に
詳しく書かれています。
興味のある方は是非読んで下さい。
映画内容は超娯楽大作です。
ある意味怪獣映画の一つの到達点です。
平成ガメラシリーズは
この『サンダ対ガイラ』が下敷きです。
というか怪獣映画作る人が
この『サンダ対ガイラ』の影響を受けない事は
不可能だと思います。
完璧なんですよ。
まず登場怪獣のキャラクター、
そのキャラの立ち方、
人を喰う怪獣という性格が
与えられてるので本当に怖い。
このサンダとガイラ、設定身長が20m程なんです。
リアルなんです。
ゴジラに足で踏みつぶされるより
20m程の巨人に喰われるという想像力の方が
働いちゃうんです。
そして二大怪獣の決戦までの描き方。
どんどん二匹が近づいていく感じ。
非現実と現実がゴチャゴチャに
なっていく感じが堪りません。
そこに絡んでいく人間側の対策。
防衛軍の描写がこれでもかという程細かいです。
男子はここでやられます。
メカとミニチュアを浴びる程くらいます。
さらに主人公の科学者達が
‟生命倫理"というテーマを背負います。
全編をこの主題が背骨みたいに貫いています。
ここが只の怪獣映画と一線を画す所です。
本編パート、特撮パート全てが
最高到達点で融合しています。
50年前にこのジャンルの
完成形みたいな物を提示しています。
凄い作品です。
何度観てもその先見性に胸を打たれます。
このフランケンシュタインの怪獣~という箇所なんですが
フランケンシュタインはアメリカの映画会社が
版権を持ってるんです。
その版権を東宝が借りています。
60年代中盤までは日本映画界の黄金期です。
アメリカは50年代中盤までが黄金期なんです。
60年代はアメリカ映画界は斜陽期なんです。
だからフランケンシュタインの版権売ったと思うんです。
(期限付きとはいえ)
キングコングの版権も60年代初頭に
東宝に期限付きで売っています。
アメリカはTVの普及が日本より10年程度早かったらしいです。
だから日本映画界もこの60年代中盤以降
TVの普及と共に斜陽期に入っていきます。
68年公開の『怪獣総進撃』までが
日本映画黄金期の特撮怪獣映画だと思います。
それ以降は一気にクオリティー落ちます。
アイデア勝負みたいになってきます。
(その最たる作品が『ゴジラ対ヘドラ』だと思う)
まあ、この時期になると
「会社は予算を削る事しか・・・」
とぼやく円谷英二先生のドキュメンタリーとかが
ありますので邦画の退潮傾向はあったんでしょう。
しかしこの「フランケンシュタイン」の
版権を買ってまで作ってた時代の映画です。
日本映画の勢いを感じる一本でもあります。
是非皆様観て下さい!!
もうTSUTAYAには置いてません。
Amazonで買いましょう。
※この『サンダ対ガイラ』は続編という扱いです。
『フランケンシュタイン対地底怪獣』という前編?
があります。
厳密に言うと前編ではないんです。
それぞれ独自の作品世界観なんですが
繫がっている"感じ"もあるという風になっています。
ハイ、言っている意味解りませんね。
この二作品を観て頂いたら解ります。
この『フランケンシュタイン対地底怪獣』も
超のつく名作です。
‟人工生命"と‟原爆"と‟戦争"がテーマです。
たかが怪獣映画と思って観て下さい。
ビックリするで。
因みにこの地底怪獣も人喰います。
しかしその描写が無いんです。
家畜の鳥を食べるシーンは丁寧に描いています。
しかし人(コテージでダンスを踊る若者達)の
被害は説明されるだけで終わります。
直接的描写はありません。
その続編で人を喰うシーンを
怪獣映画ではっきり描いたわけです。
円谷英二監督は残酷なシーンは撮らないと
後年語られていますが全くウソです。
映画における恐怖シーンを追及する
飽くなきVFX表現者です。
この前年(65年)に『大怪獣ガメラ』、
そして直前に『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』が
大映から公開されています。
ガメラの生々しい表現、
生物としての怪獣表現に対抗したとも思います。
‟俺だってこれくらい出来るんだぞ"
という感じやと思います。
そしたら翌年(67年)、
大映は『大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス』で
ギャオスが新幹線の客を喰うという
これまた人喰い描写新機軸を持ち込みます。
人を喰う怪獣(しかも一般人)が
日本にいっぱいた60年代中盤。
子供達に真剣に恐怖を届けようと
表現者達が切磋琢磨していた時代。
そんな時代の映画です。
・次の特撮ネタ、
『モスラ』はこちら。
・前回の特撮ネタ、
『怪獣総進撃』はこちら。