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『大器の器』の陶琴への想いです
Posted on 2014.06.28(Category:水琴窟と水鉢について)
『大器の器』の水琴窟、陶琴は他と比べてここが違うという事、
こだわりの場所の事を書いたつもりです。
少しでも陶琴の事を知って頂けたらと思います。
玄関の陶琴 大型陶琴への想い (陶製水琴窟)
・陶製水琴窟との出会い
『大器の器』のWEBサイトを立ち上げた理由は
この大型陶琴(以下陶琴)を皆様に使ってもらうためです。
2004年に信楽に帰って来て地元にある
滋賀県工業技術センター信楽窯業技術試験場に
後継者育成事業の研修生として入場しました。
当時の私は東京で辞めた仕事の挫折感を
もろに引きずっており
毎日目の前に薄い膜が張っている様な状態でした。
自分の家業である窯が作った水鉢や傘立や急須の
良さ等全く分かっていず
今思えば自分が恵まれている事も理解できず試験場に通っていました。
正直全く研修にも身が入っていませんでした。
大物ろくろ科に入科していたのですが
これが身に入っていませんから全く上達しませんでした。
22歳にして毎日同期の研修生(この人も学年が一つ上の地元の窯屋の息子)と
サボってコーヒーばっかり飲んでいました。
(あの時の自販機のコーヒーの味は今も舌に焼き付いています)
しかしそんな時研修担当の先生が陶製水琴窟を作っていたのです。
はじめてその装置を見たとき本当に
脳天から"ズん"と揺れが走った事を憶えています。
「これだ!!これを作って売っていこう!!」なんかわからないのですがそう思いました。
それまで水琴窟自体知らなかったのにです。
絶対に世間のお客様はこの装置を待ち望んでいると思いました。
そう思い先生に頭を下げお願いしました。「作り方を一から教えて下さい。」
研修にスイッチが入った瞬間でした。
それからというもの手取り足取り一つ一つ製作の仕方、
工程を教えて頂きました。
先生は本当に優しく、丁寧に教えて下さいました。
何も出来ないずぶの素人に本当に根気よく教えて下さいました。
私も不思議とこの水琴窟に関しては
何の抵抗も無く色々な話に合点がいきました。
今もってあの感覚、
教えて頂いていた一年間は不思議な感覚でした。
そして研修の最後にこう言われました。
「俺が知っている事は教えた。しかしこれは完成の形ではない。
これからは大器がこのノウハウよりプラスになるものを
積み重ねてよりオリジナルの水琴窟を作りなさい。」
そして陶製水琴窟に「陶琴」という名前を付けました。
これが奥田大器が陶製水琴窟「陶琴」を製作するきっかけです。
この「陶琴」に出会う過程で思った事、考えた事が
『大器の器』のテーマでありコンセプト
『皆様の生活に潤いを届ける』に繋がっています。
『大器の器』の原点の商品です。
この先まだ研修2年目の出来事や実際に販売して行く過程、
旅館やホテルへの飛び込み営業での失敗談など
この「陶琴」にはいろいろな事が詰まっています。
しかしそれを書き始めるとキリがないので
また機会があれば書きたいと思います。
それではこの後は具体的に
「陶琴」の技術的な事を述べたいと思います。
『大器の器』の陶琴に対するこだわりです。
・『大器の器』の陶製水琴窟
「陶琴」はここにこだわっています。
水琴窟ですのでこだわりは自然と「音」に集約されていきます。
この音を出すにはどうすればいいのか。
そしてもう一つ"潤い"を感じて頂くにはどうすればいいのか。
それらの事をテーマに「陶琴」及びそのシリーズは製作しています。
まず「音」ですが水琴窟は水滴の落ちる反響音を愛でる装置です。
水琴窟の窟は洞窟の窟です。
下部共鳴容器の内部の空間体積、
水滴が落ちる高さも重要です。
空間体積が大きすぎても、小さすぎても駄目です。
落ちる高さも高すぎても低すぎてもいけません。
これは上部水鉢からの水が落ちる量に合わせて作ります。
以前手のひらサイズの陶琴を作ろうとしたのですが
やはりその共鳴容器と水滴の大きさ、
落ちる高さの割合の関係でどうしても納得のいく音が出ませんでした。
水滴の落ちる高さに音の出る(水琴窟として)限界がある様に感じています。
次に上部水鉢部分ですが
この部分で下部共鳴容器に落ちる水滴の"量"と"大きさ"を調整しています。
植えている植物に水をやる、その水が下に滴っていくその場所に
"ある細工"を施しています。この細工が水滴の大きさを決めています。
水琴窟の音と思って頂けるにはその水滴が一定の範囲の大きさである必要があります。
ただ上から水をそのまま流せばよいと言うわけではありません。
それは"つくばい"です。つくばいと水琴窟は違います。
水琴窟はしっかりと"水滴"になって落ちなければいけません。
最大の陶琴の肝です。
他の製作工程は大器の器(壺八窯)の職人得意分野を合わせて作りますが、
その水滴を作る部分だけは全て奥田大器、私だけしか作りません。
その方法も窯では私しか知りません。
見れば形は分かるのですが細かいノウハウが数点あります。
これが出来なければ"水滴"として上手く落ちないという部分があります。
全ての陶琴シリーズの"水滴製造部分"は奥田大器しか作りません。
そうやって作って、この10年かけて一回の窯での良品率は70%ぐらいです。
(調子がいい時は80%ぐらい)
微妙な土のささくれ一つで駄目になる場合があります
それでも最初に比べれば良くなりました。
昔の水琴窟と現代の陶琴だと聴く環境があまりにも違います。
また陶琴は土の中には埋め込みません。簡易移動が可能です。
時代と装置としての違いを考え水音を少し大きくする事にしました。
これからもこの陶琴で、大器の器の製品で『皆様の生活に潤いを届ける』事を行っていきたいと思います。
これからも『陶琴』を宜しくお願い致します。